テレビのお仕事

昨年末、テレビのニュース番組で使う人形を作って欲しいという連絡があった。
テレビ ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 私はテレビをほとんど観ない。
高校生くらいからもう30年くらいほとんど観ていない。

一人暮らしをしていた短い期間だけ、ちょっと寂しくなってテレビをつけたけど、バラエティ番組のから騒ぎは虚しく響き、ますます寂しくなる気がした。

同じくテレビ嫌いな人と結婚して、更に拍車をかけて観なくなった。
けれどイラストの仕事をしている以上、「芸能人の◯◯みたいなイメージで!」なんて話は当然打ち合わせの席で出るわけで、その度いつも知らないことを謝ったり、知ってるふりして検索したり、申し訳ない気持ちになった。

そんな私にテレビの仕事が来た。

実は以前も、ある人形をテレビ番組で使いたいとお声がけ頂いたことがあったのだけど、実物の人形を見たセット担当者は怯んでしまったらしい。私はアーチスタフォルモという石塑粘土を使っていて、これは結構壊れやすいのだ。バタバタと忙しいテレビの現場では扱いが難しいのだろう。

テレビのセットで使われるオブジェなどは、造形屋さんに発注されることが多く、大抵FRPなどの壊れにくい素材で作られている。
その手の樹脂素材は匂いもきつく補強材も吸い込むと危険な代物なので、普通のご家庭の環境で取り扱うことは出来ない。
いや出来たとしてもやりたくはない。
そもそも樹脂は、固まった後に削ったりもできない種類が多いので、あまり細かい加工には向いていないのだ。
だからか、テレビ番組で見かける政治家の人形などは割とあっさり作られている。着色もスプレーで肌色とほっぺの赤味の2色を吹き付けるくらいの感じで施されていたりする。
報道番組でその手の人形を見かけると、似てないな~と思うことはあったけど、まあでもテレビというのは、それくらいあっさりしたものが求められているのかもしれないなと思っていた。

だから私にテレビ番組からの依頼が来たことには驚いた。当然、上記の懸念点を最初に確認したのだけど、それでもお願いしたいと言って下さった。変わった方もいるものだ。

それで今年に入って以来、実在人物の人形ばかり作っている。雑誌の仕事も重なったのでこの4ヶ月内に5名の著名人を作り、こいつぁ〜なかなか大変だ…(汗)と思っているけれど、やり甲斐はある。

オンエアされた人形を順次SNSでアップしていたら、友人から「あーいう人形、あんなにリアルな必要ある?」なんて指摘もあり、「そういう作風を見て依頼してもらったからね~」と返答したものの、まあ確かにテレビの分脈からは外れた代物を作っているのかもしれない。テレビを観ない人間が作っているのだから、そりゃそうだ。そもそも分脈がわからない。

でももしかしたらプロデューサーの方も、そういうものを求めているのかもしれないなと思う。
その方は報道番組を作りながらも「報道」の枠組みでは取りこぼされてしまうニュアンスを、個人的に写真と文章で伝える表現活動をされてる方なので、伝えきれない事柄に対して誠実かつ実験的に取り組む姿勢があるのではないかと、勝手に思っているのです。

私たちはあらゆるメディアに対して、いつの間にか分脈を読み取って、それを再生産し始める癖がある。
それがルーティンになって行くと、作り手は「こういうものでしょ」と作業をこなしはじめてしまう。
見る人も「こういうものだ」を確認して安心し始める。
そういう慣れが、作る人の思考も、見る人の思考も、鈍化させていくと思っている。
実は子どもの頃からそういうものがあまり好きではなく、自分より絵やイラストの上手い友人はいたけれど、どんなに上手でも「この人は“こんなもんでしょ”って思って描いているな」とか、心持ちが透けて見える気がしていた。不器用な人間の負け惜しみかもしれないけど。

でも、そんなわけで、テレビを見ない人がテレビの仕事をするのも良いかもしれないなと、都合良く考えているのです。
もちろん勉強不足を開き直る意味ではなく、自分の「言葉」で語れる幸せに感謝しつつ。

『ウェークアップ』(日テレ/21年4月17日放映)に出演した菅義偉氏とジョー・バイデン氏の人形

『AERA』20年6月1日号A/朝日新聞出版

『AERA』6月1日号 コロナ鬱人形作りました

ブログ、しばらくサボっていましたが、コロナ中もお仕事してました。
こちらは『AERA』6月1日号で作ったコロナ鬱人形です。マスクは着脱式です。
5ページ目の、慣れないリモートワークに喘ぐ男性のカットがお気に入りです。

『AERA』20年6月1日号A/朝日新聞出版 『AERA』20年6月1日号B/朝日新聞出版 『AERA』20年6月1日号C/朝日新聞出版

大なり小なり、多くの方があらゆるストレスを抱えているコロナ禍ですが、どうぞ皆様、無理をせず自分を大事にしてくださいね。

ところで、この一ヶ月くらい、ひたすら片付けをしてました。
その際、過去5年分くらいの『AERA』をザザーっと一気読みしたのですが、どの記事も少しも古びず興味深かったので、結構真剣に読んでしまいました。

コロナ禍で、政治の問題、排他的な差別、グローバリズムの弊害や自然破壊など、様々な問題が浮き彫りになりましたが、どれもこれも今に始まった話でなく、ここ数年で積もりに積もった問題が、コロナを機に一気に噴き出したという印象だったから、全てがリアルタイムに感じたのかもしれません。

考えてみれば個人的にも、掲載誌や制作物を片付ける暇がなく、ここ数年分のものが溜まりまくっておりました。気持ちを一新するために、日々片付けにいそしんでいます。

最近もレバノンや香港など、衝撃的なニュースがたくさんありますが、時代を見つめながらも惑わされず、自分のやるべきことをして行きたいと思っています。

「山崎春美のカンレキ遁走曲」という展示に出品します

今週末の25日(土)から、山崎春美さん(文筆家、ガセネタ/TACO)が開催する
「山崎春美のカンレキ遁走曲〈ふうが〉」という展示に作品2点出品します。



ひとつは、昨年山崎さんたちと一緒に取材旅行して制作した、
モロッコのジャジューカ村イラストマップの原画(平面作品)、
そしてもうひとつは、現在制作中の新作、山崎春美人形(立体作品)です。

人形…、だいぶ魂宿ってきてまして、面白くなりそうなので、ご覧頂けると嬉しいです。
(山崎春美さんをご存じない方でも、本人たいてい在廊とのことなので、実物と見比べられます!)

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毎日よりどりみどりの豪華なイベントもありますので、
夏の終わりのお散歩がてら、お気軽にお出かけください。

何卒よろしくお願い申し上げます。
『AERA』18年3月12日号/朝日新聞出版

星野源さん人形作りました

もう二週前の号になってしまいますが、
『AERA』18年3月12日号にて、星野源さんの人形を作りました。
『AERA18年3月12日号/朝日新聞出版

こちら、実はいつもよりかなり小さく作っています。
座りポーズで4.5cmくらい、コップのフチ子さんみたいなイメージです。
いつもは、立ちポーズで15cm前後なので、かなり小さいです。

でも写真に撮ると、大きさって解らなくなりますね。
写真で見ると大きく見えるようで、
いつものサイズでも、そんなに小さいの?って、よく言われます。

星野さんらしい、爽やかな誌面になり嬉しいです。
コピーも何だか泣けてきます!

『AERA』17年2月27日号A/朝日新聞出版

ドナルド・トランプ大統領人形、作りました!

そして今週の『AERA』、やっと追いつきました!
来る来る、とは思ってましたが早速来ました、このご依頼。
今世界中が注目しているこのオッサンです。

『AERA』17年2月27日号A/朝日新聞出版
さすがに派手です。いろいろ舞ってるし。

武器の赤いネクタイで、日本経済に混乱を巻き起こします! そして、、 『AERA』17年2月27日号B/朝日新聞出版
前に作ったアベ人形も再登場。
赤いネクタイでまんまと取り込まれています。

『AERA』17年2月27日号C/朝日新聞出版
ネクタイはこんなバージョンも作りました。
着せ替えです。オシャレさんでしょ。
こちらは決め台詞の「America  First」ネクタイになります。

是非書店にて、お手に取って覗いて見て下さい! 保存 保存 保存