『しぜん ⎯ キンダーブック』21年11月号の立体イラストメイキング

早いもので、もう11月中旬。
前の投稿が5月17日なので、気がつけば半年も更新を怠ってしまいました。
久々にメイキングを描こうと思います。
今回は『しぜん ⎯ キンダーブック』11月号です。

いつも楽しいお題を下さる『キンダーブック』シリーズですが『しぜん』は初めて。
こちらは『キンダーブック』の自然科学系部門の絵本雑誌で、
今回のご依頼は重力を説明するページの立体イラスト。
丸い地球の上下左右に子どもたちがくっついている立体を作って欲しいとのことです。

これ、一回やってみたかったんです。

というのも私、「water field colore child」と名付けた世界の民族衣装の人形を
何年も前からコツコツ作ってまして、まだ全部出来ていないのですが、
7年前にとりあえず一度展示した時はこんな風に飾ってみました。


写真じゃわかりにくいけど、ちょうどギャラリーの壁に窓状の穴があったので、
そこに埋め込む形で同サイズの箱を作って埋め込み、
せっかくだからカーテンも作ったりして、劇場仕立てにしたのです。

これはこれで面白い趣向でしたが、難点が一つ。
せっかく作った後ろ姿が見えないのです。
民族衣装だけに、背中もいろいろ凝っていて、細かい模様をちまちま描いたのに。

それにメルカトル図法の地図、これも好きだけど、やっぱり上下の間延びが気になります。
ロシア、デカすぎる…。グリーンランドも誰もいないのにデカすぎる…。
最近じゃアメリカで地球平面説の陰謀論も流行っているとかなんとか。。
いやいや地球は丸いんです。

だから、次に展示するときには、まあるい地球の上下左右にこの子たちをぷすぷす刺して
展示したいなーって思っておりました。

まあでもこの子たちの制作はここ数年サボっていて一向に増えないので
まだまだ先だにゃ〜死ぬまでにできるかにゃ〜、、、なんて緩みきっていたところ、
お題の方が仕事で先に来てしまった!

ということで、これは展示の予行演習だと思い、楽しく制作に励みました。


さて前置きが長くなってしまいましたが、ここからが今回のメイキングです。
この本では一つのアングルしか写真を使わないので半球で良いだろうと見込んだのですが
そうなると五大陸の全ては入らないわけで、さてどうしよう。
地球をどこで真っ二つにスカポンするか…。

打ち合わせでは、日本の位置が左上にくるとわかりやすいかもですねー、
なんて話になったのでぐるぐるぐるぐる地球儀を回しながら考えて、
最初に決めたアングルはこの位置でした。

わかりやすい様に、半分で切る位置に黄色いゴムを巻いています。
北極が左に来て、地中海を中心に据えたこの位置だと、
端っこすぎて見えないけれど、一応日本が左上の黄色いゴムのところにあり、
他のあらゆる人種の子たちも周囲に配置できるかな、と思ったのです。

で、ラフを作成しました。

りんごの木がある場所が、ユーラシア大陸の向こうの海に浮かぶ日本。
木の左のオレンジのパーカーを着てる子が日本の女の子で、
時計回りに、タイの女の子、南アフリカの男の子、大西洋に浮かぶタンカー、
南米大陸にはブラジルの女の子と男の子、
北米大陸にはアメリカの男の子、ワンちゃん、カナダの女の子、
再びユーラシア大陸に戻って、ロシアの男の子、と並べてみたのです。

でもこのラフの地球、ちょっと嘘をついています。
上の地球儀と比べるとわかりますが、アメリカ大陸が入る様にググッと寄せています。
意図的というより、丸いものを見ながら描くと、目では見えているものだから、
アメリカ大陸を入れたい気持ちが先走ったか、ついつい入れ込んでしまった感じです。

ちなみにアフリカ大陸がググーッとインド洋の方に寄っちゃっているのは
デッサン力の無さというか、歪んでしまっただけです、はい。
でもまあ、それほど不自然にも感じなかったので、これで良いかと。

というわけで、子どもたちは気楽にサクサク作りました。
べっこう飴状態の世界の子たち、かわいい。


さて問題は地球の方で、
東急ハンズで買って来た半球のスチロールに下地を塗ってザクっと描いてみました。
するとやっぱりラフの地球がおかしいので、なかなか辻褄が合わない…。

ラフではインド洋が狭すぎたのでもっと拡げて、
じゃあタンカーは大西洋上じゃなくてインド洋上の方がバランス良いかもと、
南アフリカの男の子と位置を入れ替えたり。

これであっている…? アメリカ大陸見えないよね…。

四角い画面から四角い画面へ模写するのは慣れていても
球体から半球体に模写するのって、意外とムズカスィ。

目だけで追ってると、どうしてもズレるので、
塗った地球をスマホで撮っては、地球儀の画像とphotoshopで重ねてみる。
するとアフリカやヨーロッパが大きすぎて大西洋にズレ込んでいることに気づきます。
ヨーロッパってたくさんの国があるから広い印象なのですが、
実は狭いところに小さな国が密集してるだけなんですよね。。

これを見ながら修正し、また撮影して重ねてみる、というのを繰り返し、
少しづつ、ズレを正していきました。

中途半端に文明の利器を利用しつつも、至ってアナログな努力の結果、
アフリカ大陸がズズズと地殻変動→移動の末、
あるべき地球の姿に近づいてきたの、ですが…、

うーん…。
アメリカ大陸、一応描いているのだけど、端っこすぎて見えません。
みんな、海に浮いているみたい。
日本の女の子も、これじゃあ大陸にいるみたい…。

これでは子どもたちのお国柄がわからないし、
そもそもこの地球、なんかしっくりこないんですよね。。


ここで編集さんに画像を送って、ちょっと相談してみました。
すると編集さんもおうちでぐるぐるぐるぐる地球儀を回し悩んでくださって
送ってくれた画像がこちらです。

おお!これは、おなじみのユーラシア大陸
そう。日本を左上にっていうのにこだわっていたのがいけなかった。

「慣れ」っていうのは侮れないものです。
やはりいつも見慣れている「北半球が上」の姿じゃないと、地球と認識しないのか?

更に私たち東洋人にとって見慣れたユーラシア大陸が真ん中にあると、
それだけでなんともしっくりくる。
これがヨーロッパやアメリカの絵本であったら、 また別のアングルになるのでしょうね。


とは言え、子どもたちはラフで設定したお国柄設定で、すでに作ってしまっている。
どうしたものか。

編集さんの地球儀画像を元に、 またphotoshopであれこれと配置を考え直してみました。

これでどうだ!

このアングルだと、日本はギリギリ右上に目視出来ます。

タイ人の女の子はフィリピンより向こう、ミクロネシアのグアム島あたりまで行っていますが、
まあ、南国っぽい服装なのでOK。

アメリカ大陸はぐるっと後ろに隠れてしまったのでどうしましょう。
アメリカの男の子、ヒップホップなファッションなのだけどな〜。
ふと思いついて「オーストラリア ヒップホップ」で検索してみると、
「“オーストラリア・ヒップホップ”がなかなかアツい!」と紹介されているサイトを発見。
よっしゃーこれだ!シドニーに移住!

カナダ人の女の子も、昔私が短期ホームステイしたオーストラリア西海岸の
パースの家の娘さんキャサリンに似てるからパースに移住!(こじつけ)

タンカーはやはりインド洋を悠々と航海し続けて。

南アフリカはギリギリ入っているのでこのままでOK。

ブラジルでサンバを踊っていた子の女の子はぁぁぁ、え〜っとぉぉぉ、
あ、いたいた!4年前に行ったモロッコのジャジューカ村に!
こんなファッションのベルベル人の女の子がいましたよ!
ってことで北アフリカに移住です。(苦し紛れ)
サンバじゃなくてジャジューカミュージックでトランスしましょう。

ブラジルで盛んなサッカーは、ヨーロッパでも負けず劣らず盛んですよね。
はい、サッカー留学で欧州へ!

カナダの女の子が飼っていたワンちゃんは、ロシアの男の子にプレゼント!

で、ほらっ。どうです?
バッチリじゃないですか!

という…、なんともアクロバティックな民族大移動の末、
構図の変更が完成したのでした。



ということで気を取り直して、地球の大陸を描き換えていたところ、
またまた事件が起こってしまいました。

下地が剥けたんです。
ぺローンと。
本当に綺麗に。

本当はその衝撃画像を皆さんに披露したかったのですが、
あまりに衝撃的すぎて写真を撮る余裕もありませんでした。
あーでもないこーでもないと大陸移動をした、あの努力はどこへ…?

犯人はコイツです。

これマヨネーズ状の粘土です。
ジオラマ作る時の壁材とかに手っ取り早く使えるんで重宝してました。
しかし、そういうおためごかしの類いには、あつらえ向きなのだけれども、
絵の支持体として使う様な気骨のあるタフガイではなかった。
たぶん成分的には木工用ボンドみたいなもので、
気は良いから飲み会の穴埋め要員にはもってこいだけど、
所詮ペラペラしたチャラいヤツ、いざというところで頼っちゃいけない方でした。

いや、絵と言っても「ただ地球描くだけだしー!」と
タカをくくって支持体を舐めていた私が悪かった。。

ということで、綺麗さっぱり生まれたままの姿に戻ったスチロールを前にして、
私も生まれたままの初々しい心に戻ったのでした。

で、この方の登場。

ジェッソさま。

決して派手ではないけれど高倉健の様に黙々としかるべきことはやる男。
コイツをを5回くらい塗って、それでもスチロールの凹凸が隠れないので、
石塑粘土で覆って、やすりがけして、、粉吸いまくり、またジェッソを塗りまして…、

やっと綺麗な丸になりました!

初々しい…。
何か生まれそうな、そこはかとなく有機的な、卵みたいに神聖なお姿。

そして私もアホですが、アホアホなりに体を張って学ぶので、
前回の失敗を省みて今度はちゃんと鉛筆で陸地のアタリをつけました。
いや、基本ですよね。。。

ユーラシア大陸!


今度こそ間違いない!
さて塗るぞ!

流石にジェッソ様と石塑粘土様の下地は堅牢で、塗りやすいのなんの。
アタリをつけたおかげで迷いもなく、あっという間に完成したのでした!

かわいい坊の竹串を刺したい。
さしたい。
サしてみたい…。
はやる気持ちを抑え、撮影に向けて厳かに梱包します。



そして撮影日当日⎯⎯⎯⎯

一度刺したら地球に穴が空いてしまうので、
まずは子どもたちを周囲に並べるだけのバージョンを。
とりあえず白い紙に置いてみました。

影が落ちる…。

あたりまえですね。
これでは半球であることがバレバレです。
もちろんこれで撮影して、後で切り抜いて合成するという手もあるのですが、
それはあくまで “おさえ” として、なんせプロのカメラマンさんですから、
影なしで撮影する方法も華麗に披露してくださったのです。

ガラスーーー!!
 
しかも、下の紙に光を反射させることで、紙自体が発光して遠い影も落ちない。
その上で、オブジェも逆光にならないためのあれやこれや、超絶照明テクを施して下さった。
その結果は…、

素晴らしい!!

でもこちらは白バックなので合成用のおさえです。

今度は合成ではなくて、青い紙(宇宙)をバックに直撮りバージョンに挑戦!

スタジオには様々なストックがありますが、グラデーションの入った良い感じの青い紙があり、
これをバックに撮ると…、

おおお〜〜〜!

深遠な宇宙を思わせる透明感!
最高です!

更に。
最後には待ちに待った串刺しバージョンです。

ファインダー越しに覗いているカメラマンさんにチェックして頂きながら
「この辺ですか〜?」といちいち確認しつつ慎重に刺していきました。

真横から見ると、タンカーなんか、結構上の方に刺してますでしょ。
マダガスカルからオーストラリアに向かって悠々と悠々と航海しています。



では出来上がった画像をご覧ください!


ジャーン!

最高!!!!

やっぱり周囲にぐるっと置かれているより、人形が多少上下している方が
動きが出て一気に豊かな雰囲気になりますね。
これは刺してみないと本当にわからなかった。


ちきゅうに ひっぱられたから!
うん。ひっぱられてる、ひっぱられてる!

あ、結局カナダからオーストラリアのパースへ移住したキャサリンは、今はデンマーク在住です。
よく見たら服のデザインも北欧っぽいじゃないですか。
それに欧州にサッカー留学した彼は、今はスペインで活躍してるみたいですね!

誌面右下に囲み記事が入るので全体的なバランスを考えて、右側の人数を減らしたのです。
この様に、打ち合わせ、制作中、撮影中、皆さんと相談しながら、
臨機応変にちょこちょこ変更したりして、より良き誌面を目指して作ってます。

ちなみにこの囲みの中の「たいよう」「ちきゅう」「つき」の絵も描きました。
他のページには、動力の説明図や、アルキメデス、ガリレオ・ガリレイ、ニュートンなど
歴史上の人物の絵なんかも描いています。
子どもの頃、理科は一番苦手な科目だったので「アルキメデスのげんり」って何だっけ??
読んでもいまいち理解できない…(汗)、などと、頭をひねりながらたくさん描きました。

でもやっぱりこの立体イラストのページが一番好きだし、わかりやすい!

子どもたちの記憶の片隅に「万有引力といえばアレ」なんて
大人になってもこの立体の残像が、残ってくれたら嬉しいなぁ。

『DIME』18年3月号立体イラスト撮影メイキング

今発売中の『DIME』18年3月号に、立体イラスト掲載して頂いています。
投資運用に関する内容なので、興味をお持ちの方はご覧になってみてください。
掲載ページは2色刷りなのですが、元のカラー写真があまりに素晴らしかったので、
編集の方にお願いして写真を頂戴し、掲載許可をいただきました。

こちらです!


…神業! の一言に尽きます。
ついつい見とれてしまいます。


天使を吊り下げつつ、壮大な光の効果や、ドライアイスでの雲の表現等、
無理難題の雨あられなのに、見事に全てクリアして頂きました。

大きな照明機材をあっちにこっちに動かしながら、 時間をかけて丁寧に光の調整をしてくださり、
その上で、 いい塩梅のスモークが撮れるまで、何回もシャッターを切って下さいました。

今までも、いろんなカメラマンさんに凝った撮影をして頂きましたが、
今回ばかりはもうホント、光の魔術師かと思いましたよ。感謝です!

2色刷りの掲載ページは、こんな感じに仕上がっています。


雰囲気は出ているものの、当たり前ですが、限界はありますよね…。

雲はドライアイスで表現しています。

この水の入った状態で、スモークだけを被写体周辺に残しつつ、
写真には写り込まないように、鍋をえっさかえっさか動かすのですが、
私、ついつい急いで動かして、立体に水をぶちまけてしまい…、
すっかり足を引っ張っておりました(幸い立体は無事でした)。

そして、サブカットとして、こんな絵面も撮りました。

ヤバイです(笑)。

こちらは毒にも密にもなり得る仮想通貨の警告を促すカット。
同じ立体とはいえ、見事にハマったので笑いました。

というわけで、ブツ撮りマスターあってこその立体イラストでございます。
素晴らしいカメラマンさんの手にかかれば、こんな世界も作れてしまいます。
皆様も、これだというテーマがあったら、是非挑戦なさってくださいね。

メイキング003〜立体イラスト・病院&介護大事典編〜

メイキングアーカイブPart.2です。 2011年3月31日に発売された『病院&介護大事典』(ダイヤモンド社)表紙立体についてのメイキングです。 こちらは、PC内にテキストデータ初稿と画像データが残っていたので、加筆再編集いたしました。 最初に書いたメイキングなので、わりと真っ当に書きました。 立体イラスト制作の流れが、非常に解りやすい記事になっています。 少し補足すると、制作時期は震災前、ブログを書いたのは震災後2011年4月7日です。 冒頭で触れている「蝋人形」というのは、松島の蝋人形館で被災、破損した人形修復業務に関わったことに関する言及です。

それではどうぞ!


さてさて、あまり蝋人形のことばっかり書いていると 何屋さんだかわからなくなってしまいますね。 本業の立体イラストに戻ります。

週刊ダイヤモンド特別編集「病院&介護大事典」書店で発売中!


表紙立体イラストを制作しました。 今回は、こちらのメイキングをご披露いたします。

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基本、手のひらサイズ。
アーチスタフォルモという、天然の石から作った石塑粘土を使っています。
こねこねしてるうちに3〜6時間程でここら辺まで成形します。

いろんな型のヘラを使います。 頭に差している針金は首を支えるためのもので、
ずっと入れておくと錆びてしまうので、乾いて固定したあとはひっこ抜きます。
(これ、数日でも錆びるので最近は竹串を使っています)

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一番良く使うヘラ。これがなければ廃業するしかない大事な大事なヘラ。

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だいたいの形が出来ましたので、一旦乾かします。

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暑い季節、乾燥している季節、暖房をつけている季節は、乾きも早い。
梅雨時は一番乾きにくく、2、3日かかることもあるので悩ましいです。

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乾いたら太めのデザインカッターや彫刻刀で修正。
足りない部分には更に粘土を足してゆきます。

実はこの作業が一番辛く、部屋中粉まみれ。
イラストレーターといえども、ここらへんの作業はほとんど造形業者です。
長年マスクなしでこれをやっていたせいか、冬になると謎の咳が出る様になったので、
最近はしっかりマスクを着用しております。

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足した粘土も乾いたら、紙ヤスリで修正。
あまり全体にきれいにかけすぎると、プラスティック製品の様に
のっぺりしてしまって面白くないので、案配を見てかけています。

やっと着色。
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粉まみれから解放されるこの瞬間が一番好き。
他の色の基準になるので、いつも肌色から塗っています。

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最初はざっくりと。

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どんどん色を重ねて行きます。

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他の人形も同時進行。

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目をくっきり入れると一気にメリハリがつくので 周囲もそれにあわせて、くっきりさせていきます。

着色完成!
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見慣れてしまうと色の感覚がわからなくなるので
着色には最低でも二日以上時間をかけています。
見落とす箇所や、次の日、違和感に気がついたりすることも多いです。

いよいよ撮影です。

これは「医療編」の目次に使用するカットのため、
「前方の医者と看護士の人形にピントをあて、後方の介護士の人形をぼかしたい」
というのがデザイナーさんの希望する絵柄です。
そのため、前後の奥行きをだいぶ確保して撮影して下さいました。
そういえば、撮影前にカメラマンの方に、人形の名前を聞かれました。
名前が解ると愛着がわいて撮りやすいんだそうです。なんて、愛のある…!
とはいえ、、当の作者はそこまで愛情をかけておらず、いつも名前なんてつけていないのですが、
たまたま今回、看護士の女の子を友人に似せて作ったので、彼女の名前を伝えると、
「はーい、Mちゃ〜ん、こっち向いて〜」 パシャッ!
なんかすごく嬉しかったです。


アングルが少し変わるだけで、表情が一変するので 繰り返し、細かい微調整を試して下さいました。


モニタに表示しながら、カメラマンさんとデザイナーさんが、
ぼかし具合などを検討しています。
細部まで妥協しないデザイナーさんの姿勢、かっこいいです!

目次はこんな仕上がりになりました!

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さりげだけれども、心温まるカットです。

そして今度は大事な表紙!


モニタの画面で表紙使用のカットを見比べています。
ほとんど同じカットの様に見えるかもしれませんが 実は右端、水色エプロンの看護士の男性の向きが微妙に違っています。
右の画像は全員がカメラ目線になっていて、左の画像では少し視線をはずしています。
こんな少しの違いですが、表紙の持つ意味はだいぶ変わってくるから重要です。
書店の棚から全員がこっちを見てると、視線が気になってはっと振向くかもしれません。
でももしかしたら、そんなに全員に見られると、ちょっとプレッシャーかもしれません。
気軽に入った服屋さんで、いきなり店員全員に「お探し物でしょうかー!?」みたいな かけ声されたりすると、
つい「結構でございますー」って引き返したくなりますもんね。
ここでは、編集者さんとデザイナーさんの熱い論議が巻き起こりました。

さてさてメイキングは以上です。いかがでしたでしょうか?
こうやって、編集者、デザイナー、カメラマン、制作者の全員が集まって、
あーでもない、こーでもない、と意見を交わし合いながら作った作品は
いつもとても良い仕上がりになります。これは絶対。 だから私は、撮影に立ち会うの、大好きです。
普段ひきこもりなもんだから、人に会えるだけで嬉しいし。

ところで、表紙は最終的にどっちになったのかって?

どっちだっけ?
それは、冒頭の表紙を見て、当ててみて下さい! 保存 保存

メイキング002~湯煙旅情編~

昨年、サーバの移転でブログ部分だけうっかり移転し忘れまして、5年分まるまる消えちゃったんです。
確かにどうあがいてもこちらのミスなのですが、それにしたって、同じ会社でちょっとランクの高いサーバに
変更し(てさしあげ)た!のに、「消えました」「無理です」と涼しげな声で言われたら、悔しいじゃないですか。
「たかだか5日ですよ!どっかにデータないんかい〜!」と言いたくなるのが人情で…。

ないんだそうです。

デジタルに情はありません。情はないけど霊魂はある…?
あの、例の、キャッシュっていう残像みたいな。あれ、なんなんですかね?
幸いネット上に、ほんの一部のキャッシュが残っていたのを友達が見つけてくれて、
だから、少しだけ、テキストデータを拾うことが出来たんです。Kさん、ありがとう!
その中から気に入っていた記事を再掲載しますね。
ネタは少し古いけど、2015年3月14日に書いたメイキングです。

ではどうぞ!


春近し!と思えど、なかなか暖かくならない3月って、
待ち遠しい分だけ、1月2月より余計に寒々しく感じませんか?

寒いです。温泉行きたいです。でも行けないです。
そんな私と同類の皆様に、目だけでも暖まって頂こうかということで、
先月(2015年2月)発売された『にっぽんの図鑑』温泉ジオラマのメイキング、いってみます。

まずはラフ。こんな感じ。
onsen_making01

そして立体が出来ました!
onsen_making02

って、すっ飛び過ぎ!何もメイキングになっていない!

いや良いんです。
今回は蝋流しのメイキングを書こうと思っているのです。
蝋を流すと、人形が動かなくなくなってしまうので、
この段階で、人形の向き等を編集さんに確認して頂きました。
赤い線は、本のノドの位置です。

しかし、お湯がないと見てるだけで寒々しいですね…。
onsen_making03
かわいそうなので、とっとと蝋を流しましょう。

まずはお湯の色を決めます。 こちらはテスト。
onsen_making04
奥にあるのは、川に使った蝋で、緑の絵の具を混ぜています。
温泉部分は、もう少し青っぽい方が良いので、青や緑の絵の具を調合して作ってみました。

ぽたっと蝋を落とさない様に、しっかりアルミフォイルでカバーして準備完了です! onsen_making05

こんな色に決めました。さー、流しますよ~。
onsen_making06

少ーしづつ、少ーしづつ、お湯が入ります。
onsen_making07
しかし、この黒々とした髪の毛は私じゃありません。
うちには蝋の魔術師がおりまして、私は信用されていないので、やらせてくれませんでした。

足湯状態。まだ寒々しい。。
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やっとお腹まで浸かって来た! ほっと一息♪
onsen_making09
良かったー。もう見てるだけでお腹こわしそうでしたよ。
しかし、指まで丁寧に作って全部隠れちゃうんだから、何やってんでしょうね。
もっと手の抜き方を憶えなければ。

ここらでちょっと様子見です。冷まして固めています。
onsen_making10

冷ますと白くなります。
固まる前の蝋の色も、透明感があって良いんですけどね~。

1時間程経過。
onsen_making11
どれどれ? と見ると、あれ…!?
さっきお腹まで浸かっていたのに、お湯が減っている!!
坊やの膝まで浸かっていたはずなのに!!

はぎゃ~~~!このはじっこ見て下さい!
こんなところまで、蝋が流れちまっている!!!!源泉状態!!!!
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この岩のどこかに1mm以下のミクロの穴があいていた様です…。 onsen_making13
蝋って固形なイメージがあるので、小さな穴なら大丈夫だろうとついタカをくくってしまうのですが
溶かした状態の蝋ってのは、意外に流動性が高くって、小さな穴でも入り込んでしまうのです。
しょうがないので、どこに穴があるのかも解らないけれど、入念に岩肌に粘土を足しました。

これでどうだっ!今度こそ逃さないぞ!
onsen_making14
しかしまた着色しなければ…。地道な作業です。

再着色を施して、いざっ! 再び流しますよー!
onsen_making15

またお腹が暖まってきました。
onsen_making16
ほっ。。
お腹が弱いので、ほんと見てるだけで、辛いんですよ。。

少しづつ白くなって固まってます。待ちの時間。
onsen_making18
周りにボタボタに垂れていますね。アルミカバーしていて良かった♪

今度は流れなかった!
onsen_making19
坊やは肩まで浸かって暖かそうです。 お二人さん、お待たせいたしました~。

これにて完成!!!

なのですが…、まだ何かもの足りなくないですか? いまいち暖かそうに感じないのは何故…??

そうだ! あれだ! 湯煙だ! やはりこれがなければ、温泉じゃないっ!

ということで…、 編集さんに相談したところ、ドライアイスを用意して下さいました。
料理の写真を撮影する時の手法で、鍋物なんかの撮影で大活躍するアレです。

ここからは、撮影スタジオにて。
砕いたドライアイスをザルに入れまして、シャッターを押す直前に素振りの様に動かします。
こちらは、編集さんがとても頑張って下さいました。
TS3W0397
こんな感じで、えいほっえいほっと。
ほっこりした湯煙がGET出来るまで、何回も何回も。
編集さん、本当にお疲れ様でした! ありがとうございました!

苦労の甲斐あって、完成! onsen_making21
この湯煙!ホッカホカです!暖かそうです!お父さんもご満悦!
あーー、今すぐ飛び込みたいっ!

ということで、皆様のご協力を経て、とても良い絵柄が完成しましたよ。感謝感謝。
正真正銘の源泉かけ流し天然温泉ですよ~!
この図鑑を親子で読んで、そうだ、こんな温泉に連れてってやろうか、なんて
どこかのご家庭でお父さんが思い立って、盛り上がってくれたら、もう最高ですね。

この温泉はですね、野趣溢れる川沿いの温泉というご依頼だったので、
ずっと前に友達と行った静岡の大瀧温泉を思い出して作りました。
あちらには滝もありましたけどね。
楽しかったな~。また行きたいな~。
ま、しばらくは、スーパー銭湯で我慢しますわっ。 保存

メイキング001〜立体戯画・安倍晋三首相編〜

さて、いろいろめんどくさいSEO対策等も完了し、やっとこさ落ち着いてブログが書ける様になりました。
これからは、古い作品も含めて、こちらでどんどん紹介していこうと思ってます。
どうぞよろしくお願いします。

では早速、ブログがなくなってた間にお知らせ出来なかったことを少々。
年始のAERAで、またこの人作ったんですよ!

じゃーん!
安倍首相
首も取り外し可能で動くんですヨ!だからちょっとうつむいたりも出来るんです。
この、どこ見て喋ってんだかわからない虚ろなアングルが、私のお気に入りです!
前に作ったのは、ニッコニコに9条壊してるバージョンで、
こちらも結構気に入ってるんですが、今回もかなり自信作なのです。

メモ程度に撮った写真があるので、軽くメイキングいってみますね。
特徴あるから簡単そうに思えるかもしれませんが、結構難しいんです、この方。
まぶたの厚いタレ目って、情に厚い好々爺っぽくなりがちなのですが、
そんな印象かけらもないですもんね。
豊麗線も特徴の一つですが、これも気をつけないと老け過ぎてしまいます。
あとアゴ、かなり首元につながってますが、これも爺さんの記号ですね。
うっかり気を抜くと、すぐ好々爺に。。

違う違う!と手探りでぐちょぐちょ捏ねてたら、あれ!?
abe-making01
これはどっちかというと、かの有名なK元首相じゃないですか!
違うんですよ!私は孫を作ってるんですよ!
やー、DNAって怖いですね。
  abe-making02
造形が出来ました。うん、イイ!と思う。
  abe-making03
濃いめの色で下地を塗っていきます。
後ろにあるのは死霊…、おっと資料の写真です。
ホワイトボード一面あべまみれ。大ファンみたいですね。。
  abe-making04
ボディの方も忘れずに。
これ作るにあたって、最近の演説動画を苦行の様に見まくって研究したんですが、
ボディアクションはいたって控えめなんですよね、この方。
手を動かしても、「小さく前ならえ」が上下するくらい、
それだとあまりにもサマにならないので、少し左右に拡げました。
  abe-making05
続いてあの大胆な眉毛を思いっきり描いてみます。これでググッと印象が近づきます。
白目と黒目の比率は重要です。
白目がちだとイッちゃってて怖い感じになりますが、
黒目がちは意志が読めなくて、ブラックホールに吸い込まれる様な怖さを醸し出します。
宇宙人グレイみたいな。この方は、確実に後者です。
お肌には、普段あんまり使わない緑の絵の具も入れてみました。

そして完成!じゃーん!
abe-making06
どうでしょう?似てますか?

ちなみに誌面ではこんな感じになりました。
撮影はお任せしていたので、刷り上がりを見て感動しました。
エンジのカーテンが、安倍劇場の末路を見事に予感させています。
『AERA』2016年1月18日号/朝日新聞出版  
さてさて、ブログ復活後のメイキング第一弾、いかがでしたでしょうか?
最近こんな風に、実在人物を作るお仕事が徐々に増えてきています。
不特定の人物を作るより難しいけれど、やりがいを感じているジャンルです。
しかしこのジャンル、似顔絵でもないし、なんと総称すればいいのだろう、、と、
ずっとモヤモヤしていたのですが、ここのところHPリニューアルにあたり、
色々キーワード検索をしていたら、海外の立体作家さんのサイトでこんな言葉を見つけました。

Clay Caricature

これだー!と思いました。自分なりに翻訳すると、

立体戯画

どうでしょう?かっこいい語感だと思いませんか?
新ジャンルの確立です!
紙媒体に限らず、報道番組なんかでも使えるんじゃないかしら。
皆様!その人の内面まで表現した奥深い立体戯画をお求めの際は、
是非ともkucciまでお申し付け下さい!