メイキング003〜立体イラスト・病院&介護大事典編〜

メイキングアーカイブPart.2です。
2011年3月31日に発売された『病院&介護大事典』(ダイヤモンド社)表紙立体についてのメイキングです。
こちらは、PC内にテキストデータ初稿と画像データが残っていたので、加筆再編集いたしました。
最初に書いたメイキングなので、わりと真っ当に書きました。
立体イラスト制作の流れが、非常に解りやすい記事になっています。
少し補足すると、制作時期は震災前、ブログを書いたのは震災後2011年4月7日です。
冒頭で触れている「蝋人形」というのは、松島の蝋人形館で被災、破損した人形修復業務に関わったことに関する言及です。

それではどうぞ!


さてさて、あまり蝋人形のことばっかり書いていると
何屋さんだかわからなくなってしまいますね。
本業の立体イラストに戻ります。

週刊ダイヤモンド特別編集「病院&介護大事典」書店で発売中!


表紙立体イラストを制作しました。
今回は、こちらのメイキングをご披露いたします。

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基本、手のひらサイズ。
アーチスタフォルモという、天然の石から作った石塑粘土を使っています。
こねこねしてるうちに3〜6時間程でここら辺まで成形します。

いろんな型のヘラを使います。
頭に差している針金は首を支えるためのもので、
ずっと入れておくと錆びてしまうので、乾いて固定したあとはひっこ抜きます。
(これ、数日でも錆びるので最近は竹串を使っています)

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一番良く使うヘラ。これがなければ廃業するしかない大事な大事なヘラ。

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だいたいの形が出来ましたので、一旦乾かします。

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暑い季節、乾燥している季節、暖房をつけている季節は、乾きも早い。
梅雨時は一番乾きにくく、2、3日かかることもあるので悩ましいです。

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乾いたら太めのデザインカッターや彫刻刀で修正。
足りない部分には更に粘土を足してゆきます。

実はこの作業が一番辛く、部屋中粉まみれ。
イラストレーターといえども、ここらへんの作業はほとんど造形業者です。
長年マスクなしでこれをやっていたせいか、冬になると謎の咳が出る様になったので、
最近はしっかりマスクを着用しております。

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足した粘土も乾いたら、紙ヤスリで修正。
あまり全体にきれいにかけすぎると、プラスティック製品の様に
のっぺりしてしまって面白くないので、案配を見てかけています。

やっと着色。
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粉まみれから解放されるこの瞬間が一番好き。
他の色の基準になるので、いつも肌色から塗っています。

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最初はざっくりと。

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どんどん色を重ねて行きます。

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他の人形も同時進行。

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目をくっきり入れると一気にメリハリがつくので
周囲もそれにあわせて、くっきりさせていきます。

着色完成!
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見慣れてしまうと色の感覚がわからなくなるので
着色には最低でも二日以上時間をかけています。
見落とす箇所や、次の日、違和感に気がついたりすることも多いです。

いよいよ撮影です。

これは「医療編」の目次に使用するカットのため、
「前方の医者と看護士の人形にピントをあて、後方の介護士の人形をぼかしたい」
というのがデザイナーさんの希望する絵柄です。
そのため、前後の奥行きをだいぶ確保して撮影して下さいました。

そういえば、撮影前にカメラマンの方に、人形の名前を聞かれました。
名前が解ると愛着がわいて撮りやすいんだそうです。なんて、愛のある…!
とはいえ、、当の作者はそこまで愛情をかけておらず、いつも名前なんてつけていないのですが、
たまたま今回、看護士の女の子を友人に似せて作ったので、彼女の名前を伝えると、
「はーい、Mちゃ〜ん、こっち向いて〜」

パシャッ!

なんかすごく嬉しかったです。


アングルが少し変わるだけで、表情が一変するので
繰り返し、細かい微調整を試して下さいました。


モニタに表示しながら、カメラマンさんとデザイナーさんが、
ぼかし具合などを検討しています。
細部まで妥協しないデザイナーさんの姿勢、かっこいいです!

目次はこんな仕上がりになりました!

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さりげだけれども、心温まるカットです。

そして今度は大事な表紙!


モニタの画面で表紙使用のカットを見比べています。
ほとんど同じカットの様に見えるかもしれませんが
実は右端、水色エプロンの看護士の男性の向きが微妙に違っています。
右の画像は全員がカメラ目線になっていて、左の画像では少し視線をはずしています。
こんな少しの違いですが、表紙の持つ意味はだいぶ変わってくるから重要です。

書店の棚から全員がこっちを見てると、視線が気になってはっと振向くかもしれません。
でももしかしたら、そんなに全員に見られると、ちょっとプレッシャーかもしれません。

気軽に入った服屋さんで、いきなり店員全員に「お探し物でしょうかー!?」みたいな
かけ声されたりすると、つい「結構でございますー」って引き返したくなりますもんね。
ここでは、編集者さんとデザイナーさんの熱い論議が巻き起こりました。

さてさてメイキングは以上です。いかがでしたでしょうか?
こうやって、編集者、デザイナー、カメラマン、制作者の全員が集まって、
あーでもない、こーでもない、と意見を交わし合いながら作った作品は
いつもとても良い仕上がりになります。これは絶対。
だから私は、撮影に立ち会うの、大好きです。
普段ひきこもりなもんだから、人に会えるだけで嬉しいし。

ところで、表紙は最終的にどっちになったのかって?

どっちだっけ?

それは、冒頭の表紙を見て、当ててみて下さい!

保存

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メイキング002~湯煙旅情編~

昨年、サーバの移転でブログ部分だけうっかり移転し忘れまして、5年分まるまる消えちゃったんです。
確かにどうあがいてもこちらのミスなのですが、それにしたって、同じ会社でちょっとランクの高いサーバに
変更し(てさしあげ)た!のに、「消えました」「無理です」と涼しげな声で言われたら、悔しいじゃないですか。
「たかだか5日ですよ!どっかにデータないんかい〜!」と言いたくなるのが人情で…。

ないんだそうです。

デジタルに情はありません。情はないけど霊魂はある…?
あの、例の、キャッシュっていう残像みたいな。あれ、なんなんですかね?
幸いネット上に、ほんの一部のキャッシュが残っていたのを友達が見つけてくれて、
だから、少しだけ、テキストデータを拾うことが出来たんです。Kさん、ありがとう!

その中から気に入っていた記事を再掲載しますね。
ネタは少し古いけど、2015年3月14日に書いたメイキングです。

ではどうぞ!


春近し!と思えど、なかなか暖かくならない3月って、
待ち遠しい分だけ、1月2月より余計に寒々しく感じませんか?

寒いです。温泉行きたいです。でも行けないです。
そんな私と同類の皆様に、目だけでも暖まって頂こうかということで、
先月(2015年2月)発売された『にっぽんの図鑑』温泉ジオラマのメイキング、いってみます。

まずはラフ。こんな感じ。
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そして立体が出来ました!
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って、すっ飛び過ぎ!何もメイキングになっていない!

いや良いんです。
今回は蝋流しのメイキングを書こうと思っているのです。
蝋を流すと、人形が動かなくなくなってしまうので、
この段階で、人形の向き等を編集さんに確認して頂きました。
赤い線は、本のノドの位置です。

しかし、お湯がないと見てるだけで寒々しいですね…。onsen_making03
かわいそうなので、とっとと蝋を流しましょう。

まずはお湯の色を決めます。
こちらはテスト。

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奥にあるのは、川に使った蝋で、緑の絵の具を混ぜています。
温泉部分は、もう少し青っぽい方が良いので、青や緑の絵の具を調合して作ってみました。

ぽたっと蝋を落とさない様に、しっかりアルミフォイルでカバーして準備完了です!
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こんな色に決めました。さー、流しますよ~。
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少ーしづつ、少ーしづつ、お湯が入ります。
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しかし、この黒々とした髪の毛は私じゃありません。
うちには蝋の魔術師がおりまして、私は信用されていないので、やらせてくれませんでした。

足湯状態。まだ寒々しい。。
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やっとお腹まで浸かって来た!
ほっと一息♪

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良かったー。もう見てるだけでお腹こわしそうでしたよ。
しかし、指まで丁寧に作って全部隠れちゃうんだから、何やってんでしょうね。
もっと手の抜き方を憶えなければ。

ここらでちょっと様子見です。冷まして固めています。
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冷ますと白くなります。
固まる前の蝋の色も、透明感があって良いんですけどね~。

1時間程経過。
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どれどれ? と見ると、あれ…!?
さっきお腹まで浸かっていたのに、お湯が減っている!!
坊やの膝まで浸かっていたはずなのに!!

はぎゃ~~~!このはじっこ見て下さい!
こんなところまで、蝋が流れちまっている!!!!源泉状態!!!!

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この岩のどこかに1mm以下のミクロの穴があいていた様です…。
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蝋って固形なイメージがあるので、小さな穴なら大丈夫だろうとついタカをくくってしまうのですが
溶かした状態の蝋ってのは、意外に流動性が高くって、小さな穴でも入り込んでしまうのです。
しょうがないので、どこに穴があるのかも解らないけれど、入念に岩肌に粘土を足しました。

これでどうだっ!今度こそ逃さないぞ!
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しかしまた着色しなければ…。地道な作業です。

再着色を施して、いざっ!
再び流しますよー!

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またお腹が暖まってきました。
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ほっ。。
お腹が弱いので、ほんと見てるだけで、辛いんですよ。。

少しづつ白くなって固まってます。待ちの時間。
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周りにボタボタに垂れていますね。アルミカバーしていて良かった♪

今度は流れなかった!
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坊やは肩まで浸かって暖かそうです。
お二人さん、お待たせいたしました~。


これにて完成!!!

なのですが…、まだ何かもの足りなくないですか?
いまいち暖かそうに感じないのは何故…??

そうだ!

あれだ!

湯煙だ!

やはりこれがなければ、温泉じゃないっ!

ということで…、
編集さんに相談したところ、ドライアイスを用意して下さいました。
料理の写真を撮影する時の手法で、鍋物なんかの撮影で大活躍するアレです。


ここからは、撮影スタジオにて。

砕いたドライアイスをザルに入れまして、シャッターを押す直前に素振りの様に動かします。
こちらは、編集さんがとても頑張って下さいました。
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こんな感じで、えいほっえいほっと。
ほっこりした湯煙がGET出来るまで、何回も何回も。
編集さん、本当にお疲れ様でした!
ありがとうございました!

苦労の甲斐あって、完成!
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この湯煙!ホッカホカです!暖かそうです!お父さんもご満悦!
あーー、今すぐ飛び込みたいっ!

ということで、皆様のご協力を経て、とても良い絵柄が完成しましたよ。感謝感謝。
正真正銘の源泉かけ流し天然温泉ですよ~!
この図鑑を親子で読んで、そうだ、こんな温泉に連れてってやろうか、なんて
どこかのご家庭でお父さんが思い立って、盛り上がってくれたら、もう最高ですね。

この温泉はですね、野趣溢れる川沿いの温泉というご依頼だったので、
ずっと前に友達と行った静岡の大瀧温泉を思い出して作りました。
あちらには滝もありましたけどね。

楽しかったな~。また行きたいな~。
ま、しばらくは、スーパー銭湯で我慢しますわっ。

保存

メイキング001〜立体戯画・安倍晋三首相編〜

さて、いろいろめんどくさいSEO対策等も完了し、やっとこさ落ち着いてブログが書ける様になりました。
これからは、古い作品も含めて、こちらでどんどん紹介していこうと思ってます。
どうぞよろしくお願いします。

では早速、ブログがなくなってた間にお知らせ出来なかったことを少々。
年始のAERAで、またこの人作ったんですよ!

 

じゃーん!

安倍首相

首も取り外し可能で動くんですヨ!だからちょっとうつむいたりも出来るんです。
この、どこ見て喋ってんだかわからない虚ろなアングルが、私のお気に入りです!

前に作ったのは、ニッコニコに9条壊してるバージョンで、
こちらも結構気に入ってるんですが、今回もかなり自信作なのです。

 

メモ程度に撮った写真があるので、軽くメイキングいってみますね。

特徴あるから簡単そうに思えるかもしれませんが、結構難しいんです、この方。
まぶたの厚いタレ目って、情に厚い好々爺っぽくなりがちなのですが、
そんな印象かけらもないですもんね。
豊麗線も特徴の一つですが、これも気をつけないと老け過ぎてしまいます。
あとアゴ、かなり首元につながってますが、これも爺さんの記号ですね。
うっかり気を抜くと、すぐ好々爺に。。
違う違う!と手探りでぐちょぐちょ捏ねてたら、あれ!?

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これはどっちかというと、かの有名なK元首相じゃないですか!
違うんですよ!私は孫を作ってるんですよ!
やー、DNAって怖いですね。

 

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造形が出来ました。うん、イイ!と思う。

 

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濃いめの色で下地を塗っていきます。
後ろにあるのは死霊…、おっと資料の写真です。
ホワイトボード一面あべまみれ。大ファンみたいですね。。

 

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ボディの方も忘れずに。
これ作るにあたって、最近の演説動画を苦行の様に見まくって研究したんですが、
ボディアクションはいたって控えめなんですよね、この方。
手を動かしても、「小さく前ならえ」が上下するくらい、
それだとあまりにもサマにならないので、少し左右に拡げました。

 

abe-making05

続いてあの大胆な眉毛を思いっきり描いてみます。これでググッと印象が近づきます。
白目と黒目の比率は重要です。
白目がちだとイッちゃってて怖い感じになりますが、
黒目がちは意志が読めなくて、ブラックホールに吸い込まれる様な怖さを醸し出します。
宇宙人グレイみたいな。この方は、確実に後者です。
お肌には、普段あんまり使わない緑の絵の具も入れてみました。

 

そして完成!じゃーん!

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どうでしょう?似てますか?

 

ちなみに誌面ではこんな感じになりました。
撮影はお任せしていたので、刷り上がりを見て感動しました。
エンジのカーテンが、安倍劇場の末路を見事に予感させています。

『AERA』2016年1月18日号/朝日新聞出版

 

さてさて、ブログ復活後のメイキング第一弾、いかがでしたでしょうか?
最近こんな風に、実在人物を作るお仕事が徐々に増えてきています。
不特定の人物を作るより難しいけれど、やりがいを感じているジャンルです。

しかしこのジャンル、似顔絵でもないし、なんと総称すればいいのだろう、、と、
ずっとモヤモヤしていたのですが、ここのところHPリニューアルにあたり、
色々キーワード検索をしていたら、海外の立体作家さんのサイトでこんな言葉を見つけました。


Clay Caricature

これだー!と思いました。自分なりに翻訳すると、


立体戯画

どうでしょう?かっこいい語感だと思いませんか?
新ジャンルの確立です!
紙媒体に限らず、報道番組なんかでも使えるんじゃないかしら。

皆様!その人の内面まで表現した奥深い立体戯画をお求めの際は、
是非ともkucciまでお申し付け下さい!